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2005.07.16 (Sat)

方向

私がその方にMTを始めて数回目に言われた言葉です。

「ボクはあんたのMTは受けない。」

右脳の損傷により障害を負われた方で言語的には問題なく
左半身不随と感情コントロールの難しさが主訴になっています。

ご本人によると、どんなに悲しい、悔しいという気持ちがあっても
涙が出ず、自分の意思通りにいかない身体に苛立ちがあるそうです。

 MTで昔の事を回想したけれど、涙が出ない。
 ボクにはMTは向いてない。だからもう受けない。

もちろんMTは回想だけが目的ではありません。
動かない身体部位の可動性を上げるなどのリハビリ目的や
コミュニケーションスキルの一環であったりもします。

でもこの方の場合は集団セッションでの参加だったため
その中に組み込まれたプログラムで中で
回想を促す場面にも出くわしてしまったわけです。

その時の苛立ちを、私にぶつけて来られたのでした。
身体機能などの喪失を受け入れられず、何年も燻った苛立ちです。
ショックでしたが、私はその苛立ちを引き受けることにしました。

その次のセッションからはいつも遠巻きに喫煙しながらの参加。
音楽や会話に積極的に参加することはありません。

でも、付かず離れず。
一定の距離感を保ちながら、根気良く関わり続けました。
セッションへの参加がなくても、こちらから声掛けをすることや
その方との雑談への積極的な参加などは、欠かさず行いました。

そんなある日。
その方は一番前に座り、セッションに茶々を入れてきました。
その言葉は荒々しく、ムードを壊すものも多かったのですが
少しだけきっかけが掴めた気がして、丁寧に対応しました。

それをきっかけに、毎回一番前に座っていただけるようになり
それからは少しずつ、荒々しい言葉も罵りも減っていきました。

そして。その方と出会ってから一年目のセッション日。
私の隣りに座って穏やかにこう言われました。

「中学校のとき、ボクは音楽の先生が嫌いだった。
 でももしあの頃、あんたが先生だったら人生変わってたろうね。
 第一、ボクはきっと音楽の授業が好きになっただろうし
 たとえ今の身体になっても、こんなには荒れなかったろう。
 今は大学の先生かもしれんけど、いつか中学の先生になりなさい。
 思春期の一番大事な時期にあんたと出会えたら
 きっと子どもたちのその先の人生が変わると思うよ。」

私はもともと、中学の音楽の先生になりたくて音大へ行きました。
私の人生を左右した、自分の恩師のようになりたくて。

でも卒業後、学校の音楽教師への就職が半分決まっていた頃に
大学側からの強い要望で、某楽器店に就職しました。
そしてそこで、ピアノのインストラクターをしていました。

その後出版社に勤務したりしましたが
結局そこから何年も、自分にとっての音楽の意味を考え続け
最終的に今の仕事に就くキッカケを与えられた気がします。

中学教師を志していたのですから、もちろんその言葉は嬉しい…。
だけどそれ以上に、一年かけて積み上げてきた関係性が
ようやく実を結んだことが嬉しくて、充実感を得る事ができました。

セラピストをやっていると、充実感よりも
「どうしてもう少しこうできなかったのだろう?」
「本当はもっとできることがあるのではないだろうか?」
「私は何か少しでもあの方の支えになれているだろうか?」
という気持ちが多く、重い気分になる事が多いものです。

だからこそ私は、小さな発見や喜びを素直に喜ぶようにしています。
そうでもしなければ、自分が押しつぶされてしまうからです。

私に会うために、利用日をわざわざいつもと違う曜日に変更して
朝から待ってらしたというその方に、感謝の気持ちでいっぱいです。
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